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東京地方裁判所 昭和45年(行ク)31号 決定 1971年2月06日

行政事件訴訟法二二条参加申立人名鉄運輸労働組合

右代表者中央執行委員長 吉村富士夫

右代理人弁護士 小林直人

同 北村哲男

被参加申立人(原告) 名鉄運輸株式会社

右代表者代表取締役 井上鮮二

右訴訟代理人弁護士 和田良一

同 高島良一

相手方(被告) 中央労働委員会

右代表者会長 石井照久

右指定代理人 千種達夫

<ほか三名>

相手方(被告補助参加人) 全国自動車運輸労働組合

右代表者中央執行委員長 引間博愛

相手方(被告補助参加人) 戸井一三

右補助参加人両名訴訟代理人弁護士 久保田昭夫

同 立木豊地

同 豊田誠

同 秋山泰雄

同 岡田克彦

右久保田訴訟復代理人弁護士 清水洋二

同 筒井信隆

主文

本件参加の申立てを却下する。

申立費用は参加申立人の負担とする。

理由

一  本件参加の申立ての趣旨および理由は、別紙申立書のとおりである。

二  (一) 当庁昭和四四年(行ウ)第二五三号不当労働行為救済命令取消請求事件(以下、「本件訴訟」という)の一件記録によれば、次の事実が認められる。

(1)  参加申立組合は、被参加申立人原告会社(以下、「原告会社」という。)の従業員をもって組織された労働組合である。

(2)  参加申立組合は、昭和四一年四月一四日相手方(被告補助参加人)戸井一三(以下、「相手方戸井」という。)に対し、同人が組合員として分派活動を行なっているという理由で除名の通告をした。

(3)  当時、原告会社の就業規則には、その三三条に「職員は次の各号のひとつに該当するときは解職する。」、同条四号に「第三四条の規程により解職されたとき」、三四条に「会社は職員が次の各号のひとつに該当するときは組合と協議して解雇することがある。」、同条二号に「組合員である職員が組合から除名されたとき」とそれぞれ規定され、その書面の末尾には、原告会社と参加申立組合の各代表者の記名押印がなされていた。

(4)  参加申立組合は、右就業規則は実質上の労働協約であり、右各規定はユニオンショップ協定(以下、「本件ユ・シ協定」という。)であるとして、これに基づき、原告会社に対し、相手方戸井の解雇を要請し、原告会社は、右要請と相手方戸井の業務阻害行為を理由に、同年七月四日付で同人を解雇した。

(5)  相手方(被告補助参加人)全国自動車運輸労働組合は、相手方戸井は同組合名鉄支部所属組合員であるとして、原告会社を相手方とし、労働委員会に対し、右解雇を含む不当労働行為救済申立てをし、その初審命令および再審命令は、いずれも、右解雇が不当労働行為に該当するとして相手方戸井の復職等を命じた。そして、原告会社は、中央労働委員会を被告として、本件訴訟を提起した。

(二) そこで本件参加の申立ての適否について判断すると、

(1)  行政事件訴訟法二二条に基づく参加が許されるためには、参加しようとする第三者がその訴訟の結果により権利を害される場合であることを要すること同条一項の規定上明らかである。

そして、右にいう「訴訟の結果」とは、判決の結論、すなわち、判決主文における訴訟物自体に関する判断の結果をいうものであって、本件訴訟における訴訟物は、労働委員会の救済命令自体の違法性の存否のみに限られるから、仮に、原告会社の請求を棄却する旨の判決がなされ、前記労働委員会の命令がそのまま維持されたとしても、右判決は、当該行政処分が適法であることを確認するにすぎない。そうすると、本件解雇が不当労働行為に該るか否かを認定するについて、解雇を正当づける一事情として本件ユ・シ協定の存在またはその効力が判断されるとしても、右判断は、原告会社または相手方戸井と参加申立組合との法律関係を拘束するものではなく、参加申立組合と原告会社または相手方戸井との間の権利関係に変動をもたらすものでもない。

また、訴訟の結果により「権利を害される」者とは、訴訟の結果により少なくとも法律上の利益を害される者をいい、同法六四条のいわゆる補助参加人と異なり、直接判決の効力をうけるものとして、あたかも共同訴訟人のように訴訟行為をなしうる地位を有する(前掲二二条四項参照)いわゆる共同訴訟的補助参加人と解されるところ、前記認定事実からしても、参加申立組合には、本件訴訟の結果により直接、間接を問わず法律上の利益を侵害されるような可能性は認められない。

(2)  なお、参加申立組合は、ユニオン・ショップ協定に基づいて使用者が組合統制違反者を解雇し、その効力が労働委員会との間で行政事件訴訟として争われる場合には、訴訟担当者である使用者は、当該組合にとって「他人ノ為原者……ト為リタル者」(民事訴訟法二〇一条二項)に準ずる地位にあるから、原告会社は、参加申立組合の相手方戸井に対する統制処分の行使につき、参加申立組合のため原告となった者に準ずる者である、と主張するが、右は独自の見解であるばかりでなく、仮に、参加申立組合と原告会社との間に右のような関係があるとしても、前掲二二条の参加の要件は前記のとおりであり、これのみを理由として、ただちに、参加申立組合を本件訴訟の結果により法律上の利益を害される者ということはできない。

三  以上述べたように、参加申立組合は、行政事件訴訟法二二条一項の第三者には該当しないから、本件参加の申立ては理由がない。

よって、本件参加の申立てを却下することとし、申立費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田宮重男 裁判官 長西英三 戸田初雄)

<以下省略>

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